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「くらしのしずく」-日々のくらしから抽出された発見やアイディア-をお届けします

チューリヒ美術館展鑑賞記 ─ 近代美術ってフラットデザイン!?/本物でお勉強という贅沢

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チューリヒ美術館展に行ってきた

場所

国立新美術館

概要

名前の通り、スイスのチューリヒ美術館の所蔵品の展示です。 副題「印象派からシュルレアリスムまで」とあるように所蔵品の中から、19世紀から20世紀にかけての作品を厳選したものだそうです。 美術と言うと、イタリア・フランスなんて思ってしまいますが、隣国スイスも美術にゆかりが深いところです。 有名な画家がスイスに滞在して作品を描いたり、有名どころではパウル・クレーはスイス人ですね。


チューリヒ美術館展

感想

一回りすれば19〜20世紀にかけてのモダニズムの美術史がわかる

まず全体の感想から。
展示の構成が親切でした。

ZurichMuseum kaijou (チューリヒ美術館展HPより転載)

印象派からフォーヴィズムキュビズム、そして抽象からシュルレアリスムまで。
一回りすれば19〜20世紀にかけてのモダニズムの美術史が概観できる構成になっています。
実に親切。それぞれの展示数は少ないものの、その特徴がよくわかる作品が展示されていて、美術の教科書のようでした。 教科書的な意味でのメインストリームの画家だと

などの画家の作品があります。それぞれ数点です。ただし、キャッチコピーの「すべてが代表作」というのは大袈裟にしても、それぞれの特徴がよく分かる作品たちです。

教科書やガイド本じゃつまねえよって人にはとてもいいですね。本物に触れながら勉強できちゃうんですから。

目玉はモネの巨大な「睡蓮」

ZurichMuseum_monet リーフレットを写真の撮ったものなので、見にくくてすいません。 でも女性との対比で大きさがわかるかと思います。 初来日のものだそうですが、一見の価値ありです。 (と言いつつ、フランスのオランジュリー美術館所蔵のもっと大きい「睡蓮」を見たことがあるので、個人的にそれほど……)

絵画ってのは色と形と線なんだ。絵の具と平らなカンバスでできてんだ!

すごーくすごーく単純化して言うと、近代美術って「モデルそっくりに描くのなんて写真ができちゃったんだし、いいじゃん。もっと自由に表現しようぜ。色と形の力をもっと解放してやろう」って運動だと思います。 そんな意識の中に浮世絵なんていう西洋人からしたらデフォルメされた自由な表現を見て、びっくりしたわけです。なんて大胆なと。
色がすげえ! 形がおもしれえ! 線が躍動的だぜ! って(たぶんw)。

「ああ、俺達は忘れていたぜ。絵画ってのは、色と形と線なんだ。絵の具と平らなカンバスでできてんだ!」って叫んだ画家がいたかは定かではありませんが、こんな気持で創作に向かってたのではないかと思います。

本展を観ていると、その息吹と熱意が感じられると思います。
ピカソなんて何描いてあるかよくわからないでしょ? 美しくないでしょ? でも奔放な色と形と線が楽しげではありませんか?

たとえば、この写真見てどう思いますか?

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これ、出かけたときに僕がスマホで撮った写真です。
もはや、樹々や苔の緑と落ち葉の赤で構成された抽象画のように見えませんか? 色が楽しげですよね。
こういう感じをもっと突き詰めたかったんだと思います。当時の画家たちは。
ゴッホなんて端的ですよね。南仏行って「こんな色の景色見たことねえ。南仏マジやべえ」って興奮したんだと思います。

そんな色・形・線の純粋な楽しさを追求した最たる画家がパウル・クレーだと思います。
本展には4点だけですが、楽しいです。女子なんか「かわいイイ」ってなると思います。 個人的には『狩人の木のもとで』がお気に入りです。
(カタログもポストカードも買わなかったので画像をお見せできません。検索すると多少引っかかりますが、ぜひ実物を!)
楽しさで言ったら、ジョアン・ミロの作品もありますね。

シュルレアリスムは抽象画とは別の方向に進みましたが、色・形・線の楽しさって点では引けをとりません。
本展の出品作で言ったら、イブ・タンギーの『明日』が面白いです。今で言うところの「キモカワ」の範疇に入るかも。

近代美術ってフラットデザイン!?

さて、「絵画ってのは色と形と線なんだ。絵の具と平らなカンバスでできてんだ!」っていう近代美術の流れを生真面目(と言ったら失礼かな!?)に継承したのがモンドリアンでしょう。
zurichmuseum_flyer (チューリッヒ美術館展チラシより転載)

行き着くとこまで行ったって感じですね。 絵画のモダニズムを支持推進した批評家にグリーンバーグという人がいるのですが、その人の主張を意訳して言うと「絵画は支持体(カンバス)・マテリアルに忠実であるべきだ」ということです。
モンドリアンは実に忠実だなって思いますね。

ここまでくるとその後から来た画家はやることなくなっちゃいますよね。それで芸術家たちはモダニズムとは別のことをやり始めたのです。いわゆるポストモダニズムです。

じゃあ、絵画のモダニズムはついえたかと言えばそうではありません。 再度、チューリヒ美術館展のチラシのデザインをみてください。 zurichmuseum_flyer_all

モンドリアンっぽいでしょ。
このチラシに限らずこういうモダンなデザインあふれてますよね。
つまり絵画のモダニズムはデザインの機能主義と合流したのです。
webデザイン界ではフラットデザインが流行りだと言いますが、絵画史をなぞっているのです。

この記事によりますと、フラットデザインは単なる流行ではなく、「マテリアル・オネスティー」というデザインの概念を根拠に持つとあります。


マテリアル・オネスティー - A List Apart 日本語サイト

「マテリアル・オネスティー」って日本語訳すればわかるとおり、「素材に忠実」です。
「絵画ってのは色と形と線なんだ。絵の具と平らなカンバスでできてんだ!」と同じです。
なので、フラットデザインって近代美術の子孫だと思ってます。
そう考えると、本展とwebデザインや身の回りのデザインと関係して考えられるなと思います。

近代美術の別の顔も観れるのもうれしい

ただそれだけじゃつまんないなと僕は思っていて、本展の良さは近代美術の傍流、教科書からのけもの扱いをうけてきた作品たちが鑑賞できることです。

などが個人的には発見でした!

ココシュカは名前くらいしか知らなかったし(『恋人と猫』が好き)、ヴァロットンとホドラーは名前すら知らなかった。
ともに象徴主義的な作風です。

zurichmuseum_asahi朝日新聞より転載。真ん中がホドラー作、下の海岸の絵がヴァロットン)

ヴァロットンは形態の簡略化、色面構成など、モダニズムっぽいのですが、面白いのが晩年古典派の巨匠アングルを模倣したこと。
アングルの描く妙にうねった人体(今で言うと、荒木飛呂彦の描く人体っぽい)を研究してたみたいなんです(『トランプで一人遊びする裸婦』)。 (アングルって古典派なのに前衛的に見えます)

ホドラーも身体性への興味がありありと見られます。
当時の前衛的な舞踏やモダンバレエが生まれたことと並行しているようです。 「身体性の追求」というテーマで言えば、ドガのバレエシリーズと並べて考えてみたいですね。ドガは印象派にくくられますが。
19-20世紀にどうして「身体性」というものにスポットがあたったのだろうか?
そしてこの流れの先にフランシス・ベーコンの身体がくるのではないか?

などとぼんやり考えています。
こんな刺激をくれたホドラーですが、国立西洋美術館ホドラーの40年ぶりの回顧展が開催しています。
行かねば! してやられたって感じですw うまい商売してるぜ。 東京展は2015年1月12日までだそうです。


フェルディナント・ホドラー展/【東京展】 2014年10月7日(火)~2015年1月12日(月・祝) 国立西洋美術館/【兵庫展】 2015年1月24日(土)~4月5日(日) 兵庫県立美術館

サイト観る限りめっちゃ面白そう。
ホドラー展も観に行けたら、ここで紹介しようと思います。

チューリヒ美術館展完全ガイド (AERAムック)

チューリヒ美術館展完全ガイド (AERAムック)

 
追記

ホドラー展に行ってきました。こちらもどうぞ。


『日本・スイス国交樹立150周年記念 フェルディナンド・ホドラー展』鑑賞記──「目が喜ぶ」絵画 - エルディの逃避数列

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