LIFE DRIPPER

「くらしのしずく」-日々のくらしから抽出された発見やアイディア-をお届けします

短編ナンセンス小説『ウラギリのメリクリにハラキリを』

スポンサーリンク

リビングの時計の長針がカチッと鳴って短針に重なる。
12月24日から25日へ。
そのかすかな音が、つけっぱなしのテレビの音声をくぐり抜け耳に届く。心に悲しく響く。
この乾いた音を聞くことになるだろうと私は予期していたのだと思う。ただ受け止めようとしなかった。できなかった。今度こそと思った。私は愚かだ。

クリスマス用のディナーで占められるテーブル。もういい加減目を覚ましなさい、夫は別の女と一緒なのよ、と激しく振動して私に伝える。私はスマホを取る。
夫からメール。
「ごめん。急な仕事が入って、今日は帰れない。会社に泊まることになった。すまん。明日の夜クリスマスをお祝いしよう。ユウトとアキに謝っておいてくれ」
私はため息をつく。涙がこぼれる。何が悲しいって、きっとこんな連絡が来るだろうことを予期していながら、それを見ないふりをしてこんなに料理を作った自分。

信じるから裏切られる。何度裏切られようと信じようとしてしまう。自分の愚かさから目を背けるために。
そんなことはない、と友人は言う。あなたはちっとも悪くないと。
確かにそう。私は悪くない。ただ愚かなだけだ。
あんな男の気持ちを引き止めることもできず、裏切り続ける男を信じ続ける。ただ愚かなだけだ。その愚かさを認められないほどまでに愚かなのだ。

「ママー、もう来た?」
ユウトが寝ぼけまなこでリビングに入ってくる。
「え?」
「サンタさん、もう来た?」
「あ、あー。まだね。そうやって起きてるとサンタさんは来てくれないよ。ほら、もどって眠りなさい。ちゃんと寝る子にはサンタさん来るから」
「ほんと?」
「ええ、ほんと」
「わかった。じゃあ寝るから、ちゃんと来てくれるようにママからもおねがいしといてね」
「はいはい。おねがいしとく。だいじょうぶ。ちゃんと来るから。朝になればプレゼントもきっとおいてあるよ」

いい子にしてればちゃんと来る?……歯の浮くような台詞とはこのことね、今の私には。ため息をつく。深呼吸をする。気持ちを落ち着かせる。戸棚に隠しておいたプレゼントを取り出す。どんなことがあろうとも、信じ続けるあの子たちの気持ちを裏切ってはいけない。私がどんなに裏切り続けられていても、あの子たちには関係がないのだから……。
しっかりしなくては……。天使のような二つの寝顔の脇にプレゼントを置きながら思う。
子ども部屋からリビングに戻ると、つけっぱなしのテレビで通販番組が始まっていた。
アメリカのものと思わしき通販番組に、白人の男女。ハイテンションな吹き替え。

「やあ、みんな! メリークリスマス!」
「メリークリスマス! こんなすばらしい日に紹介するんだから、今日は特別なアイテムなのかしら、マイク」
「ああ、もちろんさ、キャシー。サンタもびっくりなアイテムさ!」
「まあ、すごい。早く教えて」
「HaHaHa まあ落ち着けよ。ぼくの友人に世界中を駆けずり回っているバイヤーがいるんだ。目利きのジョニーって名前なんだけど、そのジョニーから深夜に電話がかかってきたんだ。

─ おいおいジョニー、こんな深夜にどうしたんだ?
─ ソーリーマイク、今ぼくはジャパンにいるんだ。すばらしいキッチンナイフを見つけたから、興奮して時差も考えずに電話してしまった。許してくれマイク。でも寝てる場合じゃないほどのアイテムを見つけたんだ。

っていうわけで、すぐに送ってもらって試したんだ。すばらしいキッチンナイフなんだよ。切れ味がクソいいんだ!」
「まあ、もったいぶってないで、早く紹介して」
「HaHaHa そうだな。テレビのむこうのみんな、今日はすばらしいアイテムを紹介できるから、ぼくはいつも以上に興奮してるんだ。許してくれよな。これがジョニーが見つけたキッチンナイフだ」
「まあきれい」
「そうだろ。ジャパンではこれをホウチョーって呼んでいるんだ」
「ホウチョー?」
「そうホウチョー。ホーーチョッチョオッッ」とマイクは叫びながらカンフーの真似をする。
「リーね、ブルース・リーみたいね」
「HaHaHa ホーーチョチョオッ」

私は気が抜けたようにテレビを見つめていた。さ、片付けなきゃ。子どもしか手をつけていない料理にラップをかけて冷蔵庫へ運ぶ。

「おいおい、キャシー、その浮かない顔はなんだい?」
「んー、正直言っていいかしら。さっきからすばらしい、すばらしいって言うけど、ほんとにクールなの?」
「おいおいキャシー、ぼくが今まで嘘ついたことがあるかい?」
「んんん……」
「まいったなあ、そこは即答でNEVERって答えてほしかったよ。まあいいさ、確かにジャパンのめちゃめちゃクールな僧侶ボウコウダイシが言うように『百聞は一見に如かず』 実際キャシーに使ってもらおう」
マイクは机の下から大きな肉の塊を取り出す。
「キャシーの大好物のスペアリブさ。さあこのホウチョーで切ってごらんよ」
「こんな大きな塊を? BBQはいつもダディが準備してくれるの。私には無理じゃないかしら」と言いながらキャシーはマイクから受け取ったホウチョーで肉の塊を切っていく。
「まあなんてクールな切れ味なのかしら。全然力入れなくても切れちゃうわ」
「だろ! これならダディがいなくてもBBQの準備ができちゃうだろ?」
「ほんとね! BBQの準備がラックラク。ホウチョーがあれば、毎日BBQできちゃうわ!」
「HaHaHa 毎日なんて極端だなあ、キャシーは。ホウチョーはもっとすごいんだ」
マイクはキャシーが切ったスペアリブを手元に置く。
「さあキャシー、見て、見て、見て」
「Amazing! 骨までサクサク切れてるわ!」
「すごいだろ、しかも全然力いれていないんだ。ホウチョーにとっては骨なんてソーセージと一緒さ。トンコツスープの下ごしらえもベリーイーズィー!」

クリスマスディナーでいっぱいになる冷蔵庫。ブーンと鳴く。もう入らないよ、と言わんばかりに。

「まだまだこんなものじゃないぞ、ホウチョーの実力は」
「えー、まだ何ができるの?」
マイクは自慢げな顔をして、机の下から、タコ足配線で電源コードが絡み合った塊を取り出す。
「見るからにイライラさせるわね」
「そうだろ。テレビのコードはこれかな……レコーダーは……ということはパソコンの電源は……ってイライラさせるよね。会社での入り組んだ人間関係並にイライラさせられるよ、まったく」
「ほんとだわー」
「そんなときはホウチョーの出番さ」と言ってマイクは絡まった電源コードの塊を机に置いて、ストンッ、ホウチョーを振り下ろす。電源コードを一刀両断。
「ほら、これでスッキリ解決さ」
「ほんとだわ。すごいわ、ホウチョー。そんなこともできちゃうのね。ジャパニーズがイライラせずに忍耐強いのもわかるわ」
「まだ驚いちゃいけないよ」
机の下からゴムホースを取り出す。
「なにするの?」
マイクはニコッとして、左手でゴムホースを宙に持ち上げる。そして右手に持ったホウチョーをスパンスパンッと振り下ろす。その度にゴムホースを短く切っていく。
「すごーーい。ヤバイ!」
マイクはゴムホースを机の上に寝かせる。
「もっと細くできるんだ」とマイクはゴムホースを千切りにしていく。
「どうだいキャシー。全然力が必要ないから、ゴムホースをネギのように千切りできてしまうんだ」
「Wow わかったはマイク。ジャパニーズ料理のレシピ本見ても、そもそもあんな風に切れないんだけど、これがあればジャパニーズ料理も”Tea’s child, two dice “ だわ」
「そうさ、”お茶の子さいさい” さ。キャシーもやってみるかい?」
オフコースYES-YES-YES ……これ切れ過ぎ! この切れ味、クール過ぎて、言葉にできない」
「だ ろ? マジックみたいだろ。ぼくも最初はこんなナイフあるわけない、なんか仕掛けでも仕込んでんだろ?ってジョニーに詰問したんだ。ぼくの番組はホンモノ しか扱ってないんだからねってね。そしたらジョニーは、種も仕掛けもない、こんなマジカルなナイフを作れるのはジャパニーズの伝統的な職人技のおかげなん だって言うんだ。ジョニーが無理言ってホウチョー工場に取材にいってくれたんだ。職人はみな、サムライの刀を作っていた数百年続く刀鍛冶の子孫なんだそう だ。キャシーみたいに疑り深い人のために制作風景を見せてあげよう。激レア映像だぜ」
その映像には、ベルトコンベアにロボットの自動車工場並みの施設、全員忍者の格好をしている職人の姿が映っている。工場の壁は銭湯にあるような富士山の絵が描かれている。
映像が終わり、スタジオに戻る。  
「どうだいキャシー? ファンキーだったろ……おいおいまだゴムホースを切ってるのか! 何メートル切れば気が済むんだ HaHaHa」
「だって、これもうやみつき。この切れ味、未体験」
「まったくキャシーの言うとおりだ、サムライの国ジャパンだからこその……って、Hey キャシー! ゴムホースだけじゃなくて、自分の手まで切ってるじゃないか!」  
キャシーの左手の指がなくなっていた。
「まあほんとだわ! あまりにもよく切れるから気付かなかったわ」
「HaHaHa そうさ、痛みを感じないくらいの切れ味なんだ。はじめに言っておくべきだったな、ソーリーキャシー。視聴者のみんなも気をつけてくれよな」

テーブルに残されたのはクリスマスケーキ。パパと一緒に食べる、というユウトの優しい気遣いで、結局手をつけずに残ってしまった。ホールのままではもう冷蔵庫に入りそうもない。切り分けよう。

「ホウチョーのすごいところは硬いものをスパッと切れるだけじゃないんだ。柔らかいものもキレイに切れるんだ。たとえばトマトをスライスするときなんて困るだろ?」
「うちでは困らないわ。トマトはギュって握りつぶして、鍋にボーンって放り込むから」
「……ワイルドだなあ。じゃあ……ケーキはどうだい? ホールケーキを切り分けるのは大変じゃないかい? ……もしかしてケーキも手づかみなんてことは……」
「もうマイクったら、ジョークはやめて。切り分けて食べるわ」
「失礼失礼。ホームパーティーでケーキを切り分けるのは大変だよね」
「大変。せっかくのデコレーションも台無しにしちゃうの」
「あー、"ホームパーティーあるある" だね。ちょうどクリスマス。クリスマスケーキを切るのに困っている人もいるんじゃないかな」
「うちではクリスマスは友人とかを呼ばずに家族だけでお祝いするんだけど、お姉ちゃんのほうが大きいとかなんとか必ずもめてしまうわ」
「クリスマスにもめちゃあ、イエスさんに面目立たないよね。でも今年からはこのホウチョーがあるから大丈夫」
「ほんと? 今日、帰って家族とクリスマスパーティーをするから、実はクリスマスケーキを持ってるんだけど、ここで切ってもいいかしら」と言ってキャシーはクリスマスケーキを持ってきて、切り始める。
「HaHaHa  まったくキャシーはちゃっかり八兵衛だな。でもそんな家族思いのキャシーがぼくは好きさ。来年のクリスマスパーティーにはぜひぼくも参加したいよ。でも 家族だけでお祝いするんだよね……ってことはぼくも君の家族の一員にならないと……この番組もぼくたち二人のコンビでずっとやってきて、ぼくらのパート ナーシップがばっちりだから大好評なわけだけど、そろそろプライベートの方でもパートナーになってもいいんじゃないかなあって……」
「パーフェクト! 見てマイク、おかげでキレイに切れたわ」
「あ、ああ。切るのに夢中だったみたいだね……ってキャシー! 君んちは何人家族なんだ? 1、2、3……35、36!? 36等分! もう1ピースがペラペラだ。そりゃもめるよ」
「ちがうの。あまりにも切れるから、つい余計に切ってしまったわ。ほんとは24等分で十分だったんだけど」
「24!? 十分大家族じゃないか! ああキャシーんちは大家族なんだ……でも……あれだ……ジャパニーズは大家族が大好きだから今視聴率がうなぎのぼりに違いない……キャシーのダディはさぞやビッグなんだろうねえ……」
「ねえ、マイク。これ欲しいわ。いくらなの? 高いんでしょ?」
「もちろん、日本刀並みに高いんだ」
「ああ、やっぱり……」
「しかし今日はクリスマス! ジョニーも大盤振る舞い。通常価格の8割引きにしちゃう!」
「オーマイガッ! アイラビューマイク」

私はクリスマスケーキを4等分しようとして、ためらう。あの人の分なんていらない……いらない、3等分でいい……。そう思うと涙が出てきた。悲しい? 悔しい? 包丁をケーキに垂直に刺した。

「そんなこと言われたら昇天しちゃうよ。よし、もっとサービスしちゃうぜえ。今すぐ申し込んでくれたクールな奴には、特別に……」
「特別に?」
「特別に、彫刻でKANJIを彫ってあげよう! ジャパンの名彫師集団AssComeにお願いしたんだ。仕事が早いから、どんなKANJIでも、明日には届けてくれるんだ」
「あーマイク、なんて素敵なの!」
「実はもうキャシーにぴったりのKANJIを彫ってもらったんだ。クリスマスプレゼントさ」
マイクは大事そうに机の下からリボンで飾り付けられたホウチョーを取り出す。その柄には「蜂蜜」と書かれてある。
「これ何て意味?」
「日本語でハニーって意味さ、マイハニー」
「まあ、マイク。なんてセクシーなプレゼントなの! これからは聖マイクって呼ぶわ! ダーリン」
「ああもうダメだ。もっと言ってくれ!」
「ダーリンは聖マイクよ」
「ワンモアー! マイ・スウィート・ハニー! もう一度! 昇天しそうだあ」
「ダーリン、クレイジー・フォー・ユー
「Oh ジーザス!」
「マイク、マイク、しっかりして! 大事なこと忘れているわ。申し込みの電話番号をみんな教えてあげないと……」
「おおキャシー、おおキャシー。ワンモアー、ワンモアープリーズ、take me to heaven」
「マイク、調子に乗らないで。またプロデューサーから怒られるわよ。これはビジネス。さあ、愛すべき視聴者のみんなに申し込み方法を説明してあげて」と呆れ顔でキャシーは言うと、ホウチョーをマイクの腹に刺した。
「ビ ジネス? プロデューサー? なんて切ない響きなんだ、ハニー。絶大な人気をほこるぼくたちのパートナーシップはエターナルなんだ! 全米が涙するくらい のラブなんだ! それに口を挟めるのは神様だけさ、そうだろ? マイ・スウィート・ハニー……って、Oh ジーザス! Oh ジーザス! ホウチョーが刺さってるじゃないか。まさかキミかい、ハニー。刺したのはキミかい?」
「さあ早く、説明して。スタッフみんな、手を回しているわ」
キャシーは「Even Buddha’s face is sand!」と叫んで、ホウチョーをもう一本マイクの腹に刺す。
「あ あキャシー、”仏の顔も三度”ってことかい? ”Oh Buddha!”ってことかい? キミはいつからそんなに冷たくなってしまったんだ。それにしても、なんてヘブンリー・タッチなナイフなんだ。テレビの前 の天使たち、聞いてくれ。刺されてることに全く気が付かないくらいの切れ味だ。見てくれ、二本も刺さってるのにフツウに話せてるなんてびっくりだろ? サ ムライがハラキリしても平気な理由がわかったよ! ジャパンにはこんな素晴らしい技術があったからハラキリ大国になったんだ。クロサワとミフネに ” It's a Wonderful Life!”のリメイク、” It's a Wonderful Knife!”って映画を撮ってほしかったよ。脚本はもちろんぼくさ。そうだな、こんなストーリーはどうだろう。

ある村にお人好しで善人のサムライがいたんだ。名前はショージ。村に困ったことがあれば自分のことは勘定にいれずに何でも協力し助けた。村人からは”便利屋ショージ”と呼ばれ愛されていたんだ。
村にチンピラがやってきて、狼藉三昧で村人たちを困らせる。怒りにふるえるショージはチンピラを斬り倒す。
しかしそのチンピラ、山賊一味だった。山賊が集団で復讐にやってくる。山賊の親方、可愛いの舎弟の弔いに大金を要求。金が用意できなきゃショージを差し出せ、と村人たちに迫る。
村 人たち、ショージを差し出すことを全会一致で即決。村人の疾風の如き手のひら返しに驚くショージ。代々伝わる大事な刀を質にいれて、金を借りる。とりあえ ず命だけは、と願い出るつもり……が、借りた金をいれたサイフごとなくしてしまう。ああもうだめだと絶望するショージ。切腹しようにも刀もない。村人は知 らん顔。追い込まれたショージ、川に身を投げる。
そこに天使フランシスコ・ザビエルが現れる。おお哀れな善人ショージよ、あなたが本当に無くしたのは、この金の入ったサイフか、それともこのナイフか?
ショージ溺れながら、サイフとナイフ両方だ、と答える。
天使ザビエルが答える。残念! あなたが本当に無くしたのは、サイフでもナイフでもなく、ライフです!

どうだいキャシー。最後はアメリカンジョークでしめて、ショージが為す術なく川下に流れていく感動的なエンディングさ。エンディング曲はもちろん SUKIYAKI。コピーは"全米が涙"だな。アカデミー賞もんだろ。クロサワはもうなくなってしまったから、脚本をミヤザキに送ってみようかと……って ハニーがいないじゃん。おいおい早退なんてわがまま娘だなあ。そこが可愛いとこでもあるんだけどね。というわけでここからはぼく一人でお送りするよ。さあ みんな、どうだい? もう欲しくてたまらないだろ? 今すぐ申し込んでくれれば、明日にはすぐお届けさ。そうそう言い忘れていた。実はこの値段で提供でき るのは今日のみ、しかも本数限定。ジャパンの工場でパートタイムの忍者が一本一本丹精込めて製造されているからね。今回はぼくたちが独占して全世界に提供 してしまうんだ。"ちょっと考える。旦那に相談してみないと”  なんて言っている場合じゃないぞ。限定23,503本……ん?ソーリー、間違えちまった。出血がひどくてぼーっとしてきた。正しくは限定7万3千5……あ あ視界がかすんできてよく見えない……だいたいそんくらいだ。さあ今すぐここに電話をしてくれ! 間違えるなよ。番号はトウキョーゼロヨンニ……」

私は催眠にでもかかったかのように、その番号を電話に打ち込んでいた。
「……ええそう、代引 きでいいわ。確認なんだけど、明日の夜には……そうなの、そうじゃないと困るの……旦那が帰ってくるの……急に思いついたの、子どもたちにモツ煮込みを食 べさせてあげたいって……ごめんなさい、あなたには関係のないことよね……うちはクリスマスなんか関係ないの、旦那が呑気に帰ってくるの、そしたら新鮮な モツが手に入るから……きっと子どもたちも七面鳥なんかより喜ぶわ……だから必ず明日の夜には必要なの……漢字?……いらないわそんなの……特典だからっ て言われても……どうしても?……じゃあ”御霊前"とでも彫っておいて……

 

─ おしまい ─

 ▼Amazonで人気の包丁▼

ヴェルダン 三徳庖丁 165mm OVD-11

ヴェルダン 三徳庖丁 165mm OVD-11