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パイレーツ・オブ・カリビアン3部作の機械仕掛け的アクションと物語

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3部作と4作目

パイレーツ・オブ・カリビアンの5作目が公開された。

そのタイミングで4作目までがテレビで放映されたので、復習をかねて全作を見直しました。5作目を観る前に、4作目までの感想をメモしておこうと思う。

1から3作目までの「呪われた海賊たち」「デッドマンズ・チェスト」「ワールド・エンド」は物語のつながりがある3部作となります。

世間の評価と変わらないと思うけど、やはり3部作が圧倒的に面白い。4作目の「生命の泉」が駄作というより、3部作が面白すぎるのだ。4作目で物語が変わってしまっただけではない。

3部作と4の大きな違いは、アクションではないだろうか。

ピタゴラ装置的なアクション

ともに派手なアクションだが、3部作では機械仕掛け的なアクションと復数の伏線が有機的にからみあいながら物語が進んでいく。4作目だと、この有機的な絡み合いが薄く見える。アクションはアクション、物語は各登場人物の思惑や感情の絡み合い、というふうに別々にわかれて見える。

3部作はどうだろう。極端に言えば、各登場人物の感情や思惑もすべてアクションという物理現象で表現されているかのようなのだ。

それに物語とのからみが少なかったとしても、3部作のあの機械仕掛け的なアクションはそれだけで観ていて楽しい。ロープを使った振り子運動やテコの原理が組み合わさり、まるでピタゴラ装置のようだ。ときに物理法則に逆らうが、それもご愛嬌。


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この機械仕掛け感がもっとも炸裂したのが2作目の「デッドマンズ・チェスト」だろう。登場人物が多くなり、もっとも話のスジが複雑だったが、アクションの楽しさが圧倒的だった。

この機械仕掛け的なアクションを味わえるのは、例えばチャップリンバスター・キートンハロルド・ロイドを敬愛したジャッキー・チェンの映画ではなかろうか。

とはいえ、ジャッキー・チェン映画の場合、やっぱりフューチャーされるのはジャッキー・チェンの身体能力で、パイレーツ・オブ・カリビアン3部作の場合は機械仕掛け感のほうが印象に残る。ジャック・スパロウの身体能力はかなりすごいはずなのだが、だれもそうは思わない。まあパイレーツ・オブ・カリビアンがCGで、ジャッキー・チェンはリアルでアクションしているからというはもちろんあるのだが。

CGを使いアクションに機械仕掛け性を高めることで、ジャック・スパロウを超人的なヒーローではなく、喜劇的なトリックスターにしている。

監督の違い

4作目では、以上のような感じが薄い。きっと監督の違いが大きのではないか。

3部作はこのパイレーツ・オブ・カリビアンシリーズで一躍評価を高めたゴア・ヴァービンスキー。4作目は『シカゴ』や『SAYURI』のロブ・マーシャル

ゴア・ヴァービンスキーパイレーツ・オブ・カリビアン3部作の後に撮った『ローン・レンジャー』も3部作と同様、機械仕掛け的なアクションと復数の伏線が有機的にからみあいながら物語が進んでいき、めっぽう面白い。

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3部作は好きだけど、4作目には不満って方は、『ローン・レンジャー』を観ることをおすすめします。

ローン・レンジャー』にはジョニー・デップも出ています。ジャンルは西部劇。明らかにバスター・キートンの『大列車強盗』へのオマージュでもあります。

ヴァービンスキー装置と名付けよう

ところで、ピタゴラ装置は日本でしか通用しない名前ですが、世界的には「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン(Rube Goldberg machine) 』と言うらしいです。アメリカのルーブ・ゴールドバーグという漫画家が発案した表現方法から、そう呼ばれるようです。

wikipediaによれば、映画でのルーブ・ゴールドバーグ・マシンの有名な例としてチャップリンの『モダン・タイムス』が挙げられています。

ルーブ・ゴールドバーグ・マシンのwikipediaの定義だと以下のようになっています。

普通にすれば簡単にできることを、手の込んだからくりを多数用い、それらが次々と連鎖していくことで実行する。樋状の棒の上に玉を転がしたり、ドミノを倒したり、台の上に何かを置いたりするなどの簡単な作業を行うことで仕掛けが作動し、それによって次の仕掛けが作動していく。このようにしていくつもの仕掛けを連鎖的に作動させ、最終的に何らかの作業を実行する。

引用元:ルーブ・ゴールドバーグ・マシン - Wikipedia

まさに3部作はこんな感じの連鎖性、機械性がなかっただろうか。なんなら、3部作のような、機械仕掛け的なアクションと復数の伏線が有機的にからみあいながら物語が進んでいく様を、ヴァービンスキー装置と名付けよう。

CGあってのヴァービンスキー装置ですが、CGをフル活用してキートン、ロイド、チャップリンの映画表現を更新したとも言える。

1作目の『呪われた海賊たち』の最初で、エリザベス・スワン(キーラ・ナイトレイ)がコルセットが苦しくなって海に落下し、物語とアクションが大きく動き出すわけだが、この落下こそヴァービンスキー装置の始動なのだ。それはまるで、ピタゴラ装置ルーブ・ゴールドバーグ・マシンが、最初に玉を転がしたり、ドミノを倒したりすることで連鎖的にからくりが作動していくかのようではないだろうか?

ヴァービンスキー作品

パイレーツ・オブ・カリビアンシリーズですっかりヴァービンスキー好きになったので、過去作をレンタルで見直しました。

パイレーツ・オブ・カリビアンシリーズ前に撮った、『ザ・メキシカン』『ザ・リング』。パイレーツ・オブ・カリビアン直後のアニメ『ランゴ』。そしていまのところの最新作『ローン・レンジャー』。

一番おすすめなのは、『ローン・レンジャー』です。というか、それ以外はいまいちでした。ブラッド・ピッドとジュリア・ロバーツ主演の『ザ・メキシカン』やアニメの『ランゴ』は、舞台は違えど3部作的な物語構造というか世界観でした。しかし、なんかヴァービンスキー装置感がいまいちでした。『ザ・リング』に関しては、オリジナルの日本の『リング』を尊重したのでしょう。今後、ヴァービンスキーなりにホラーを撮ったら面白いだろうなあと思いました。

今後もヴァービンスキーには注目したい。

そしてまた別の監督になった5作目はどうなのだろうと楽しみだ。観たら感想を書こうと思う。

>>>5作目の感想はこちら

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