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エドワード・ヤン『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』と『台北ストーリー』を観て

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2017年、エドワード・ヤンの生誕70年没後10年ということで、あの『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』がデジタル・リマスターで蘇った。それに合わせてか、初期作『台北ストーリー』が日本初公開された。

『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』は以前、ショートバージョンを観た記憶がある。ショートバージョンといっても3時間はあったと思う。

今回の完成時のオリジナル・バージョンは4時間近くある。

おぼろげな記憶でしか語れないが、今回のオリジナル・バージョンのほうが話がわかりやすい(普通のエンターテインメント映画に比べたら、不親切ですが)。それもあって4時間はそんない苦しくない。

大半のシーンが薄暗がりの中で展開される。映画館でないと何が置きているか判別できないシーンが多い。ある意味挑戦的です。

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主人公のチャン・チェンが懐中電灯を点滅させるシーンが象徴するように、光と影がこの映画のテーマでしょう。だからこそ、薄暗がりの映画的なシーンより、夜間学校の蛍光灯の一様な光に照らされる教室のシーンが印象に残った。

確かに傑作で、他にもすばらしいところがあるのだけど、やっとこさ発売されたDVDでもう一度観ないと、言語化できないです。

『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』のあとに『台北ストーリー』を観たのですが、それを観てエドワード・ヤンアバンギャルドさを認識しました。

台北ストーリー』は初期作だが、他のエドワード・ヤン作品よりずっとアバンギャルドだと思う。

観るのが大変なんです。シーンを追っていくのが大変というか。

普通、場所の全体を映してから、その空間の一部分とかそこにいる人を切り取ってカットを繋いでいくものなのに、いきなり部分が映るのです。

ここどこ? この人は誰と話しているの? と戸惑う。で、カットが続いていってしばらくしてから全体を把握できるような編集になっているのです。「あーこういう空間に、人がこうやって配置されていて、対話しているんだな」と。

空き家でキャッチボールしているシーンが一番象徴的です。

公開当初の1985年、全然客が入らなくて数日で打ち切りなった、というのもちょっとわかります。今の時代でも、結構難読しますもの。

エドワード・ヤンは編集が下手とか、映画の文法を知らなかったとかではないでしょう。たぶん意図的です。

こういったアバンギャルドエドワード・ヤンという認識から、DVDを再見したいなと思います。

牯嶺街少年殺人事件 [Blu-ray]

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台北ストーリー [Blu-ray]

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