おすすめ本『歩く』 (ヘンリー・ソロー 著、山口 晃 翻訳)
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おすすめする本
著者
ヘンリー・ソロー
1827−1862年。アメリカの思想家・作家・博物誌家。ハーバード大学卒業後、家業の鉛筆製造業のほか、教師、測量、大工などの仕事をしながら、自然観察と思索の記録を膨大な日記にのこした。生前に刊行された本は『コンコード川とメリマック川の一週間』、『森の生活』の二冊だが、講演に使われたエッセイや日記なども刊行され、特に「一市民の反抗」はガンジーやキング牧師の愛読書としても知られる。(本書より)
感想
ソローと言えば『森の生活』が有名ですが、読んだことありません。
正直、現代で言うところのC・W・ニコルさんみたいな人!?くらいの認識しかありませんでした。本書を読んでみて、この認識は、そんなに間違っていないかと思いました。 政治的側面を強くした自然愛好家・活動家って感じでしょうか……
漠然とした説明で申し訳ないです。
実際さほどソローに興味があったわけではないので……。
じゃあなんで本書を買ったかというと、タイトルに惹かれたからです。
「歩く」(原題 Walking)。潔い。
ぼくは「歩く」ことが好きです。
「徒歩」という移動手段としてではなく、どちらかというと「散歩」の「歩く」です。
わざと1駅前で降りて歩いて帰ったりします。
ただなんで歩くのが好きかと言われると、明確には答えられません。
それで、本書を読めば歩くことの魅力がわかってくるかなと、手に取りました。
本書に書いてあるのは、有り体に言えば、自然賛歌です。
最近再びアウトドアブームですが、硬派なアウトドア雑誌に出いていそうな文章のテイストです。そういうカルチャーの走りと言ってもいいかもしれません。ただ個人的にはそういうものを読みたかったわけではないので、ちょっとものたりない印象でした。
逆に言えば、ライトな文章で読みやすいと思います。
ソローは19世紀半ばの人です。
工業化が進み、当たり前にあった「自然」を見つめ直す言葉が出てきたのでしょう。
ただソローがソローたるゆえんは、ただの「自然賛歌」ではないということでしょう。ソローの文章は、”インド独立の父”ガンディーに強く影響を与えてそうです(イギリス留学中にソローの著作に触れたそうです)。しかし、この点については不勉強で知識不足なので、ここでは深入りしません。
さて、本書の前半はソローの「歩く」というエッセイですが、後半は訳者山口晃氏による「歩く人ソローについての覚書」という文章が掲載されています。
ソローは膨大な日記を残したそうだが、それ読んだ山口氏によるソローという人物の素描のようなものだろうか。
これがおもしろい。正直こちらのほうがおもしろかったです。
ソローは、「ウシガエルの研究に一日中、突っ立っていた」という変わり者だったらしい。
ソローの生活や人生が淡々とした筆致で書かれてある。
頑固なわりに飄々としている変わり者。
学者として歴史に名を残したソローの姿とは別に、ここに書かれているソロー、頑固で飄々、職を転々、ときどき突飛なことをするオジサンに惚れてしまった。
こんな小説書けたらいいなって思いました。